最速に対する誤解

経験者

剣道をやっていれば誰もが憧れる「最速の打ち」についての考察です。

最速の面と聞いて神奈川県警の高鍋進選手をイメージされる方も多いと思います。

秘密は「最短距離」と「事前準備」だと思います。

竹刀の振り幅を小さくする(最小の振り幅)

緩めておいた腕を伸ばすだけにする(最短距離の軌道)

間合いを詰めた際、足の前後の幅は、ほぼ打突が完成した足幅にしておく(後は踏み込むだけ)

上半身を前に倒して間合いを稼ぐ

などが挙げられます。

人間の運動スピードの頂きのような面は、もはや芸術作品です。誰しもが憧れてしまいます。

しかし僕は思うのです。最速の面が運動スピードによるものだけであるはずがないと。

剣道は奥が深く、肉体のピークを過ぎた僕たちにも最速の面が打てる可能性が残されているはずだと。

最速についての誤解

そもそも「速い打突だ」と感じて欲しい人は、打突するあなたでも、その試合を見ている第三者でもなく「相手」であるはずです。

陸上など一人で完結する競技であれば速さイコール競技者自身の運動スピードの速さです。

しかし剣道のような対人競技であれば速さとは

相手が打ってくると気づいてから実際に打突部位に竹刀が当たるまでの時間

が短いことです。

極端な話、相手がよそを向いている隙に面を打てば、相手は打突されて初めて自分が打たれた事に気づくので初動に気づくまでの所要時間0の世界最速の面の完成です。

振りのスピードを上げたり、中心をとって最短距離で打突するだけが最速でない事はご理解いただけたでしょうか。

それでは肉体だけに頼らなくても最速の打突を打てる方法を一緒に考えていきましょう。

最速を生む方法

  • 1 注意を他に向ける

運動スピード以外で最速を生む方法としての1つ目が、相手の注意を他に向けるです。

簡単に言うとあなたが面を打とうとしているのに、相手は「小手がくる」と勘違いをしてくれればその分、面に気づくまでの時間が稼げます。

この相手の勘違いを起こさせるには、剣道の成長段階によって工夫が必要でしょう。

初心者のうちは、フェイントでも通用するでしょう。

レベルが上がるに連れてフェイントは通用しなくなりますので、目線は小手を見るとか、打つ直前に剣線を少し下げる等で相手の意識を他に逸らす必要があります。

最終的には本当に小手を打つという気概が相手の勘違いを誘う気がしています。

  • 2 起こりを消す

相手がこちらの打突に気づいて実際に当たるまでの時間を短くする方法の2つ目として

起こりを極力消す

事が挙げられます。

剣道は、上級者になればなるほど上半身に無駄な動きがなくなります。それは相手はほとんど上半身の動きで打突の初動を察知しているからです。

第三者として俯瞰して見ているのであれば、足だけが既に打突の体制に入っている事に気づけるかもしれませんが、相手と対峙していると案外足までは見えない事が多いのです。袴がくるぶし丈まで長い事は、大事な足捌きを相手から隠す意味もあると思います。

起こりを消すイメージとしては、居合道が挙げられます。

居合の達人が抜刀する時いつ刀を抜くのか事前の動作がほとんどわからない事が最速を生んでいます。

言葉で説明する事は簡単で必要最小限の動作、必要最小限の力加減を目指しましょう。

しかし実際に行うのは難しくひたすら試行錯誤するしかないと思います。

ただそこを目指して稽古するのと、ただなんとなく速い打ちを目指して稽古するのとでは明らかに差がつくでしょう。

個人的には古武術にヒントがあると思っています。一時期、甲野善紀さんの書籍を読み漁っていました。興味のある方は一読の価値があると思います。

  • 3 相手に打たせる

最後に挙げるのは、相手に打たせるです。

思い出して下さい。自分が打った瞬間は防御の意識がほぼ0ではないでしょうか。

出頭技や返し技を打たれた時は、一瞬の出来事で避ける間もなかったはずです。

それは自分から距離を縮めた事と相手の打突に気づいて実際に打たれるまでの時間が短い事が挙げられます。

あなたが技術的に出頭技や返し技が出来る前提だとして、どうしたら相手が打ってきてくれるでしょう。

簡単にいうと相手が打てると思って打って来る時追い詰められてつい打ってしまうの2パターンあると思います。

相手に打てると思わせるには誘いが必要です。

ただ単に打突部位を空けても相手は「ははーん、こいつ面を誘っているな?」とバレてしまいます。

こちらの攻めが心理的に効いた状態で相手にバレない程度に気を抜き、相手が今がチャンスだと思う事が大切です。

同じようにこちらの攻めが心理的に聞いた状態でさらに攻めた場合、手を伸ばせば当たる距離なので何かしらのアクションを起こす必要に迫られます。

この距離での心理的な我慢比べに勝てる度胸が必要になってきます。

詳しいテクニックまで文章で伝える事は難しいので後は日々の稽古で掴んで欲しいと思います。

これまで運動スピードを上げる以外で、最速の打ちを生み出す方法として、「注意を他に向ける」「起こりを消す」「相手に打たせる」の3つを挙げましたが、他の方法もあるはずです。是非こんな方法もあるよなどのコメントをインスタで頂けると嬉しいです。みんなで向上していきましょう。

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