剣道の稽古を構成する5つの柱

保護者、指導者

剣道をやられている方に向けて書きます。一度日々の剣道の稽古内容を俯瞰してみましょう。

僕にとって剣道の稽古は5つの要素で構成されています。

もちろん人によっては違う考え方もあると思いますが、日々の稽古を見つめ直すきっかけになればと思って書きました。

特に大人の剣道家向けに書いていますが、学生の方にも是非読んで欲しいです。

黙想

まず始めに「黙想」です。

稽古の始めと終わりに行いますが、ほとんどの道場で形骸化されていませんか?

アップルの創業者スティーブ・ジョブズが瞑想を行っていたこともあり、近年ではビジネス業界で健康や生産性アップのために取り入れられています。

黙想、瞑想と聞くと宗教っぽく感じる方もいるのではないでしょうか。

たしかに一理あります。起源は禅にあるからです。しかし禅というのは仏教から自己のメンタルをコントロールする部分をフォーカスしたものです。

「禅問答」や「座禅」という方法は自己のメンタルをコントロールする修行です。

時代はさかのぼり剣道がまだ剣術と呼ばれていた武士の時代では本番イコール命のやり取りでした。

当時の武士達がいかに強くても同じ人間です、死ぬ事は怖いに決まっています。

そこで取り入れられた修行が禅によるメンタルコントロールです。

過去の後悔や未来の不安を断ち切り今に集中する事で死への恐怖を克服していたのです。

ですから本当の黙想とは単なるスポーツ的なイメージトレーニングとは一線を画します。

現代剣道で「持った竹刀を刀と思え」という教えは、この死への恐怖の克服にこそ剣道の本質があるからではないでしょうか。

僕の黙想の目標は、客観的に自分と環境を見れる心理状態である「無」や「明鏡止水」の状態です。

瞑想や無我を科学的に知りたい方はこちらの記事を↓

次に「形」です。

形が大事という事は知っているけど試合に勝つ事が優先され、ついつい後回しとなり昇段審査前に少し練習するという方が大半ではないでしょうか。

また昔の話ですが、剣術の世界での稽古方法として竹刀のような物や防具が登場するのは江戸時代の話です。

それまでは「形」による稽古方法が主流だったのです。

広くや狭くなどの「距離」や早くや遅くなどの「タイミング」は口で説明しても人によって誤差が生じます。ましてや呼吸法や目付けなどの高度な技術は尚更です。それでは師の教えが弟子に正確に伝わりません。

そこで誤解が生じないように弟子に技術を伝える方法として形による稽古を行っていました。

それだけ形には本来重要な事が含まれているのです。

試合至上主義も剣道を好きになるためには必要かもしれませんが、剣道の最高段位である八段審査になっても形の審査がある理由をもう一度考えてみる必要があるのではないでしょうか。

18代目中村勘三郎さんの「型がある人間が型を破るから型破り、型がない人間が型を破ったら型なし」という言葉は有名ですよね。

僕の形の目標は形に込められた創始者の真意を解明することです。

基本稽古

だれでも素振りや切り返し、面、小手、胴、突き等の基本稽古を行うと思います。

しかし基本稽古の意味を考えた事はありますか?

僕は基本稽古には2つの意味があると考えています。

1 一つ一つの動作を切り離す事で見つめ直し、常に技の精度を向上させるため

2 反復する事で、無意識に体が動くための神経回路を作る

試合や立会いの最中に動作の一つ一つを考えていては相手に遅れをとってしまいます。

そこで動作の一つ一つを切り離して練習する必要があります。

算数でいうとテストで問題が解けるように九九や公式を覚えるような作業です。

繰り返す事でその動作の神経回路が出来上がり徐々に意識しなくても動けるようになります。

指導者の方達が生徒さんのクセを修正するのに苦労するのは、一度間違った動作で神経回路が出来上がるとその修正に時間がかかるからです。

そのため幾つになっても基本稽古は常に見直してアップグレードさせていかなくてはいけません。

また基本稽古は、切り返し一つとってもあなたの成長の段階よって稽古で意識する課題は違ってきます。

始めは足の幅や手首の角度、振りかぶりの拳の位置などが正しく出来るように稽古します。

次に上半身と下半身の連動。

さらに上手くなるとスピード、その次は力加減、そして呼吸・・・

何段になっても基本稽古は必要ですし、課題をもって取り組む事で日々の稽古が楽しいものとなります。

僕の基本稽古の目標は、理想のイメージと実際の動作を一致させる事です。

立会い

人によっては試合稽古や地稽古かもしれませんが、いわゆる実践的な稽古です。

勉強でいうところのテストです。

今のあなたの実力を見つめ直すきっかけになりますので、余計なことは考えずに目の前の相手に集中して臨みましょう。

特に昇段審査を目指している方は、常に審査時の緊張感をイメージしながら礼や蹲踞も全力で行いましょう。

そして基本稽古もそうですが、オススメは動画撮影して見直すと上達が早くなります。

それほど客観的に見る事は重要な事です。

さらに言うと時間の無い社会人なら尚更一回の一回の稽古が貴重ですから、仕事と一緒で稽古の生産性を上げていきましょう。時間は有限ですから。

僕の立会いの目標は、立ち会った相手がこの人とまた立会いたいと思うほどお互いにゾーンに入り高め合う事です。

学問

最後にあえて学問を持ってきました。

剣道の目的は人間性を鍛えて社会に貢献する事です。

試合に勝ったり、昇段審査に合格する事も人間形成のための大切な目標ですが、目的ではありません。

いくら剣道の技術が上達しても人を傷つけるような人間では剣道をやる意味がありません。

だからといって難しく考える必要はなく、学問といっても学生時代の人からやらされる勉強ではありません。

この記事を読んでいる事も立派な学びです。要はあなたの興味のある事を学べばいいのです。誰も強制はしません。

孔子ではありませんが、行動だけの人は危険ですし、勉強だけの人は役に立ちません。

剣道はその両方を鍛える事ができる日本の価値ある文化です。

学びは毎日続ける必要もありませんし、少しずつでもかまいません。大人になってから自分の興味に従った学びはとても楽しいものです。そして主体的に行う学びは必ずあなたの血肉になっていくはずです。

血肉となった学びは、想像もしないタイミングで役に立ったりします。

無知のまま幸せな人生よりも、学んで苦悩する人生の方が充実した人生と言えるのではないでしょうか。

僕の学問の目標は今だにわかりません(笑)

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