子供が喜ぶ掛かり稽古?

保護者、指導者

はじめに

剣道経験者にとって「掛かり稽古」は恐怖の対象です(笑)

掛かり稽古と聞くだけで、学生時代に経験したいつ終わるか分からない地獄の経験が蘇るの人は多いと思います。

誰しもが辛い、苦しいと思っている掛かり稽古ですが、指導者の立場になるとやはりその重要性に気づくのではないでしょうか。

でも、いざ自分が子供たちに指導する立場になると「子供たちにあんな苦しい思いをさせたくない。」と思う優しい方や、「たくさん稽古に取り入れているのだけどもイマイチ結果が出ない。」と思っている指導者もいると思います。

道場によっては、良い先輩、良い稽古方法が既に確立されており、子供たちは先輩達を見習い、いつしか掛かり稽古が出来るようになる、そんな伝統があるところもあるかと思います。

今回は、僕のようにそんなに実績も伝統もない道場で指導されている指導者や「うちの道場はなぜこんなに掛かり稽古をするのだろう」と疑問に思っている保護者の方に向けて書こうとおもいます。

なぜ掛かり稽古が大事なのか

どうして多くの道場で掛かり稽古を取り入れるのでしょう。

掛かり稽古にはどんなメリットがあるのでしょうか。

一言でいうと「試合に勝てる技術が身に付く」からです。

具体的にいうと

・技と技の間隔がスムーズになり、連続技が打てるようになる

・すり足が早くなる

・無意識に力の抜く加減が理解できる

・剣道に迫力が出る

・呼吸が長くなり、体力もつく

挙げるとキリがありません。

「そんなにメリットが多いなら、稽古にもっと取り入れれば効率よく強くなれる」と誰しもが思うのも無理はありません。

しかし、今の時代の子供たちに何の説明もなく無理やり掛かり稽古ばかりやらせて、剣道が嫌いになるリスクを僕は無視できません。

先生!掛かり稽古やろう!

先日耳を疑う出来事がありました。

指導をしている道場で生徒に「先生!掛かり稽古やろう!」と言われたのです。

掛かり稽古が恐怖の対象の僕からしたらその一言が子供たちから出たことが驚きでした。そしてそんな一言が出た子供たちの成長を感じて泣きそうになりました。

その一言が出るまでの背景をご説明します。

僕が指導のお手伝いをしている道場は、生徒数も多くなく、実績もありません。それでも子供たちの成長を第一に考えて、コツコツ稽古をやっていました。

僕は掛かり稽古の重要性は認識しているつもりでしたので、はじめのうちは掛かり稽古をやった時期もありました。

しかしある程度基礎が確立する前に掛かり稽古をやっても、悪いクセがさらにひどくなるな、と感じて掛かり稽古を控えていました。

また無理に掛かり稽古をやらせて、剣道が嫌いになる方がマイナスだとも考えていました。

子供たちのレベルを考えながら

「基本打ち」だけでは、形の合理性は高めていく事はできますが、すり足のスピードや打突の勢いなどが中々強化出来ませんでした。

そこで「面の打ち込み」「約束稽古」を取り入れました。

「面の打ち込み」では、元立ちを打ち手から5メートルほど離して5本を3セットくらいやりました。

気をつけた点は、スピードと打突の勢いです。

離れたところからスピーに乗ったまま勢いを活かした迫力のある打ちになるように指導しました。

ちなみに打ち込みでの面打ちは、小さく振らせました。大きく面打ちにすると足が走りながらの面打ちになる子が続出したからです。

「約束稽古」では、面体当たり引面、面体当たり引胴、面打ち2本✖️2回を行いました。

この稽古の良い点は、掛かり稽古と違い打つ箇所をあらかじめ決めているので、元立ちのレベルが低くても何とかなるところです(笑)

この稽古では、スピードと有効打突になる打ちを気をつけました。

うちの掛かり稽古

さて1年ほど面の打ち込みや、約束稽古を続けある程度全体のレベルが上がってきたので、掛かり稽古をいよいよやろうと思いました。

掛かり稽古で非常に重要なのは、打たせる側、すなわち「元立ち」です。

元立ちが上手いと子供たちは同じ時間内でもさらに成長します。

元立ちには、間合いを理解させたり、打たせる箇所を開けるタイミングなど、様々な技術が必要になってきます。

理想は子供たちの元立ちのレベルが上がり、子供たちだけでも質の高い掛かり稽古が出来ることです。

現段階で、うちの道場ではまだその段階ではありません。そこで僕が元立ちになって子供たちに掛かり稽古をさせようと思いました。(引き立て稽古とも言います。)

しかし掛かり稽古=キツイ稽古と思わせたくなかったため、

・ 一人当たりの時間を短くする

・ 子供たちには、「時間を短くするから、とにかく全力のスピードで打ってこい」と説明

という掛かり稽古を2周だけ試しにやってみました。

やってみて驚いたことに、子供たちのテンションが途中からおかしくなって、2周で終わるはずが3周4周と自ら掛かってき出したので、途中で僕から止めました。

そして翌週の稽古で生徒の一人に「先生!掛かり稽古やろう!」と言われたのです。

また他の生徒は、母親に掛かり稽古したいから居残り稽古をしていいかとお願いをしていました。

僕は居残り稽古をする約束なんてしていないのですが、、(笑)

「時間内の稽古で全力を出すようにしようね。」とその子に指導しましたが、結局居残り稽古でまた掛かり稽古の元立ちをやる事になりました(笑)

おわりに

子供たちは競うことが大好きです。

一人ずつ掛かり稽古をすることで、他の人の全力を目の当たりにして、「おれの方がもっと早く打てる」と闘争心に火が付いたようです。

また日頃指導をしている先生の面を思い切り打つことはとても楽しそうでした(笑)

そしてヘトヘトになる前に短く掛かり稽古を切るので、つらい記憶にもなりません。

そして全力を出す事でテンションが上がりさらにキツさを忘れます。

子供たちを見ていて「全力を出すことは気持ちのいいこと」だという事を思い出させてもらいました。

大人になるとなかなか一人で全力を出す機会が少なくなってきます。

でも本来、全力を出す事は気持ちのいいことなのです。

子供たちからは本当に多くのことを学ばせてもらいます。これからも僕の予想を超えてくるのだろうと楽しみで仕方ありません。

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