前回の反省点
前回の稽古で後輩に敗北した際の反省点を振り返ると
①スピードを過信して攻めが不足していた
②打った後、体が止まっていた
③冷静な判断ができていなかった
の3点だった。
そして、これらの反省点を活かし次の稽古からどんなことに意識をするか考えたところ『腹をくくって、相手を動かすまで攻め、捨て切って打突する。』というこれまで意識してきたことと同じ結論に辿り着いた。
改善するところが明確になった。後輩との再戦の機会が待ち遠しい。
いざ再戦
その機会は意外と早くやってきた。
1週間後に再度稽古することになった。
後輩の前に行く前に先ずは腹をくくる。立ち会うまでの僅かな時間だが、「きつい」とか「打たれたくない」とか集中力を妨げる思考をシャットダウンするためにも覚悟が必要だ。
僕の場合ここのメンタルコントロールでパフォーマンスが随分変わる。
お互い丁寧に礼をする。蹲踞。
精神はいい感じに集中した状態で地稽古が始まった。
次は技術面だ。
集中力のリソースを相手の観察に全振りにする。
前回はここで失敗した。今回は同じ失敗は繰り返さない。
こちらから早いけど腰の入っていない小手を打つ。
相手の構えは全く動じない。それどころか「いやいや」と笑っている。
「そんな打突では、だめですよ先輩」と教えてくれているみたいだ。どちらが先輩か分からない(笑)。
冷静に相手を観ると、相手の得意な間合いが近間だと分かる。僕の好きな間合いは、中間からやや遠間だ。
前回は相手の体勢が万全のところに打突してしまい、出小手、擦り上げ面、抜き胴を打たれた。
絶対に近間にならない、打った後止まらないことを意識して近間にならないように気を付ける。
中間の間合いをキープしつつも、できるだけ自分から攻めてペースを握る。
出頭面を決めるには相手も打突のチャンスだと思わせないと打ってこない。
一瞬だけ近間に入るように、左足は継がずに右足を出しながら、剣先を一瞬だけ下げてコンパクトに面を打つ。
これで打たれたら仕方ないと全身全霊で。
という事を攻め合いの中で閃く。
自分でもびっくりするくらい良い面が決まった。
やはり剣道は『攻めて相手を動かして捨て切って打つ』に限ると改めて思う。
満足した僕。取り返しにくる後輩。
また間合いの攻防が始まる。
後輩が攻める、たまらず僕は手を上げて面を防御。
しかし後輩の面は僕の右面を目掛けて打ってきた。
見事な右面が決まる。
油断したつもりはないが、足が止まり上半身だけで防御してしまった。手だけで防御すると必ずどこかに隙ができる。後輩は冷静にその隙を打突してきた。やはり一枚上手。
『攻めて相手を動かして捨て切って打つ』に『残心』が抜けていたことに気が付く。
正しくは『攻めて相手を動かして捨て切って打って、気を抜かない』だった。
ありがたい
後輩と稽古を重ねて本当に色々な事に気付かされた。
稽古相手に恵まれた。このレベルの稽古相手がいて本当にありがたい。
『ありがたい』は有る事が難しいと書く。
このレベルの相手と稽古できることは決して当たり前ではない。
この後輩も小学生のころからこの齢になるまで剣道を継続してきて今の高みにある。
そんな相手と稽古できることは確率にすると本当にあり得ない数字だと思う。
日常の全てが有り難いことの連続だ。
全力で稽古をすると、こういう当たり前の凄さに気づけるまで、自分の感覚が研ぎ澄まされる。
全力を出すことは学生のころは当然だったが、大人になるとその機会が極端に減る。
周囲の人たちとのバランスを取る比重が子供の頃より増えるからだ。
剣道をやっていて本当に良かった。剣道は生涯続けられる。
こんな競技は多くはない。
後日談。
今回の稽古は、満を辞して臨んだ。
稽古場には運良く例の後輩も防具を持って参加した。再戦のチャンス。
しかし、こんな日に限って道着と袴を入れたバッグがないことに気づく。
防具と竹刀とやる気だけは持ってきたのに、肝心な道着と袴を自宅に忘れてしまったのだ。
取りに帰るのは時間的に無理だ。
残念そうな僕を見かねた別の先生が、近くの自宅から道着と袴を手配してくれて、何とか今回の稽古が可能となったのだ。
そう考えると今回の稽古で得られた貴重な体験は、色々な人たちに支えられて実現可能となったもので、本当に有り難いことだ。
次の稽古に向けて
今回改善点を分析して、課題をもって臨んだ稽古であった為、成長が実感できた。
しかし実力で後輩に追いついたわけではない。今回得た感覚を自信にしつつも、更なる高みを目指さなくては目標は達成できない。
そこで次の稽古への課題を考える。
先ず集中力の持続。
自分の納得のいく技が決まった時点で集中力が欠けた。
試合だったら勝ち続けることは難しい。
2点目は、打突の機会を増やすことだ。
出頭技を意識していたので、数回は打突できたが、打突した後や防御した直後など一本を取る貪欲さがまだなかった。
返し技や引き技も打てるようにしたい。
次回の稽古も楽しみだ。
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