うちの子剣道向いていないかも?と思ったら

保護者、指導者

剣道をしていると学生の内は、どうしても試合が主になってきます。

あなたのお子さんが試合に勝てなかったり、同級生に比べて技術の習得が遅いと、ついつい「うちの子は剣道に向いていないのでは?」と心配になったりします。

そんな方は是非、落ち着いた場所でこの記事を読んだ後で、もう一度お子さんを見てあげて下さい。

あなたのお子さんこそ、未来の八段かもしれません。

そもそも剣道で得ようとしているものは

剣道をやる目的は、社会に貢献する人間になるためです。

剣道は稽古を通じて人間を形成するためのツールなのです。試合はあくまで剣道を普及させるための一手段でした。

試合は稽古の成果が目に見えて分かるし、他人に勝るという事はこの上なく自尊心が満たされます。

ですので、決して試合自体を否定はしません。

僕が嫌いなのは、試合で勝つ事を至上としている人です。

いくら試合技術がトップクラスでも、他人に迷惑をかける人間では剣道している意味がないからです。

試合に負けた時は、「次にどうすれば勝てるかを考えるきっかけ」を与えてもらったと思い、次の稽古の課題にして欲しいです。常に超えるべきは昨日の自分です。

間違っても僕たち親が、我が子の成長を信じることなく、「あの子には絶対勝ちなさい」みたいな、相対的な価値観に陥って欲しくありません。

とは言え、周りの同級生達が急成長したり、試合でいい結果を残している中、我が子が置いていかれているような時、子供以上に焦ってしまう親の気持ちは大変よく分かります。

しかし、あなたのお子さんが決して人間的に周囲の子達より劣っている訳ではありません。そこは絶対に親であるあなたが勘違いしてはいけないポイントです。

言葉に出さなくても、子供はその本心を感じとります。

焦らず「長い視点」「本質的な視点」で我が子を見てあげて、

・やろうとしている事

・出来るようになった事

・当たり前に出来るけど実はすごい事

を発見して、言葉で伝えてあげて下さい。

きっと素晴らしい大人に成長します。我が子と剣道の力を信じてみて下さい。

不器用の一心に勝る名人なし

現代人の私たちは、ついつい短期的ですぐに結果が出ることばかり望んでしまいがちです。

「長い視点」と「本質的な視点」で僕が思い出すのは、日本が誇る宮大工、西岡常一(にしおか つねかず、1908年ー1995年)さんです。

西岡さんは奈良県法隆寺専属の宮大工であり、薬師寺金堂再建ではNHKの番組『プロジェクトX』でも取り上げられています。

西岡さんの父も祖父も宮大工でした。西岡さんが高校進学の際、父は時代を見越して工業学校への進学を進めます。

しかし西岡さんは祖父の勧める農学校に入学します。

将来お宮を建てる家に生まれたのであれば普通建築学科のある学校に行きそうなものですが、見ているスパンが一般人と違います。

建物は木で作られている。その建物を作る木は土から生まれる。土を知らない人間が立派な宮大工にはなれない。という考えからだそうです。現代人の我々には一見遠回りに見えますが、その後西岡さんは薬師寺再建を任される日本一の棟梁になります。

長い視点についてこんなエピソードがあります。

再建された薬師寺西棟の高さが設計よりも30㎝高く完成したそうです。

疑問に思った方が西岡さんに質問したところ、木材の乾燥収縮や重力などを考えて500年後に設計図通りの高さになるとのことでした。

そんな西岡さんの格言の一つに「不器用の一心に勝る名人なし」という言葉があります。

なんでも器用に習得する人間は長続きせず、継続しなかったり、浅いレベルで止まってしまう事がある。

反対に始めは不器用でも愚直に継続する人間がとんでもない領域までいけるというような意味です。

剣道でも同じです。

小学生の時は、上手い事優勝していた子が、大人になったらいつの間にか剣道を辞めていた。

学生の時から面ばかりにこだわり、結果を残せなかったあいつが、とても立派な剣道をする高段者になっていた。

そんな事がよくあります。

おわりに

もしもあなたのお子さんが、全く価値観の合わない道場主の下で剣道を嫌々しているのであれば、移籍や他のスポーツへの転向もアリだと思います。

決して剣道だけが唯一無二の競技ではありません。

その子にもっと合った競技があるかもしれません。

それでも僕は、日本で育まれてきた剣道は、日本の良いところがたくさん詰まった文化だと思っています。

変化の激しい現代にこそ必要なスキルは、人格と教養だと思います。

その二つを磨く事が出来る剣道は習い事として、とても優れていると個人的には信じています。

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