速い打突には秘密がある。という事で前回は、主に下半身「左足と腰の関係」について記事を書きましたので未読の方は併せて読んで下さい。
今回は、上半身について、特に「左手の使い方」について書いていきます。
この記事をきっかけに、明日からあなたや、あなたのお子さんの剣道上達のヒントになればと思います。
速い打突の考え方
テクニックの話に入る前に、僕なりの速い打突について重要な考え方を2つ説明します。
・無駄を省く
一つ目が無駄を省くという考え方です。
瞬発力による速さにだけに頼っては、肉体の衰えとともに通用しなくなってきます。
大切な事は、無駄な工程を省くことで速度が増すという考え方を持つ事です。
例えば1→2→3という3工程よりも、1→2という2工程の方が速いという事は誰でも分かるはずです。
でも多くの人が今覚えている動きをそのまま今よりも速くしようとしてしまいます。
「距離」に対する考え方もそうです。
弧を描く円運動よりも、直線的な動きの方がより早く目的地に着きます。
・迫力を出す
二つ目は迫力を出すという考え方です。
速い打突で忘れてはいけない事は、打突の迫力です。
いくら速い打突が、相手に当たっても迫力が無ければ一本にはなりません。
打突に迫力を出すには
メリハリのある大きな声
力強い踏み込み足
相手の力を利用する(出頭技など)
竹刀の先端を出来るだけ大きく振る
等が挙げられます。
ここで勘の良い方は気づかれたと思います。
「さっきは、直線的な動きが大切と言っていたのに、次は竹刀を大きく振るって矛盾していない?」と思われた方は素晴らしいです。
でもこれ(動きは直線的なのに、竹刀は弧を描く)は可能です。
次は、いよいよ技術的なところに入っていきます。
左手の使い方
上半身の動かし方で大切な部分は何と言っても「左手」です。
まず前提として「構えの基本」と「手の内の基本」ができているという事で話を進めます。
そして速い打突を速い面打ちと仮定して話を進めます。
速い面打ちの左手の使い方ですが、結論から書きます。
この記事の最初に出ていた僕の描いた左手のイラストを参考にして欲しいのですが、
構えた時の左拳の位置から、打突が決まった時の左手の位置まで最短距離で持っていくという事です。
なんだそんな事、刺し面ね。と思われた方、少し待って下さい。
順を追って解説します。
まず左手の動きですが、拳を最短距離、つまり直線的な動きで打突位置まで動かし始めます。
この時、曲げていた肘が伸び始めると思います。
次に手の内、つまり手首の動きを使います。
肘を伸ばす、手の内を効かす。この2つの動きを拳の位置が直線的に移動するように一瞬で行います。
参考ですが、打突時の左手の位置ですが、基本はみぞおちの高さと言われています。
僕は、相手の喉めがけて伸ばすように指導しています。
右手の使い方
左拳の位置だけで考えると打突まで最短距離を通りつつも、手の内の作用で竹刀の先端は弧を描きます。
ここで注意しなければいけない事は右手です。
右利きの方が多いため、ついつい右手に力が入り、左手の動きを邪魔してしまいます。
テコの原理でいくと、左手が力点、竹刀の先が作用点、右手は支点になります。
ですので、左手と同じように右手まで同時に直線距離で動かし始めると竹刀の先端が弧を描かない、刺し面になってしまいます。
出頭面であれば、刺し面でも一本になるでしょう。
しかし、迫力を出すためにも竹刀の先端が弧を描くという動きを僕は大切にしています。
ここでテクニックです。
右肘を伸ばし始めるのをほんの少しだけ左手の始動より遅らせるのです。
手首は曲げないといけませんので、右手は脱力しておくのがポイントです。
お手元に竹刀を持って、構えてみて下さい。
そしてゆっくり左腕を伸ばし始めて下さい。
この時右手は左手を動きを邪魔しないように手首も曲げてみて下さい。
不思議な事に振り上げていないはずの竹刀の先端が上がっています。
そして「右手は押し手、左手は引き手」と言われるように手の内を効かせれば面打ち完成です。
下半身との関係
次にこの上半身の動きをいつ発動させるかです。
早く当てようとすると意識は手にいき、手から始動してしまいます。
みなさんは、「相手が打ってきた」と認識する時はどの時点ですか?
達人は別ですが、相手の竹刀が動き出した時に反応していませんか?
という事は手を動かすのは出来るだけ遅い方がいいのです。
理想は、踏み込む瞬間まで上半身はそのままで、右足が踏み込む直前に手が動き出すのが理想です。
小学生など、体がまだ出来上がっていない時期はもう少し早く手を動かし始めないと間に合わないでしょうが、少なくとも、左足で腰ごと前に出た状態(重心が前になった状態)から手を動かすといいでしょう。
おわりに
文章だけで説明するのは難しいですね(笑)
インスタもやってますので、分からない事があれば気軽にDM下さい。
どんな運動もそうですが、『意識して動く→脳の思考回路が出来る→無意識でも動く』の繰り返しです。
理想の動きを会得するまでには、今無意識に動いている体の動きを意識的に変え続けなければいけません。
新しい動きを無意識に出来るようになるまで、ひたすら意識的に動かすしかないのです。
これが非常にストレスがかかるため、続きません。
ブログを読むだけでなく、自分で理想の動きをイメージして、稽古の動画を撮って改善してという風に主体的にやる事が上達の近道だと思います。
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