はじめに
コロナも落ち着きやっと稽古が活発化してきましたね。
久しぶりに稽古をすると基本打ちだけでバテてしまいませんか?
全国レベルの選手や、高段者の先生方が長時間稽古しても呼吸が乱れないのには理由があります。
答えは適当だからです(笑)
適当を侮ってはいけません。的確に当てると書いて「適当」です。日常会話でよく使うテキトーとは意味が違います。
要は力を入れるべきところに入れ、抜くべきところは抜いて心身を自然な状態にしているからです。
始めのうちはこの状態が分からず手や肩に力が入り過ぎて、呼吸が乱れてしまいその結果、短時間でも疲れてしまいます。
では上級者の方々はどこに力を込めているのでしょう。
それは『丹田』です。
丹田(たんでん)とは
丹田という言葉は武道をしている方なら一度は聞いたことがあると思います。
「でも正直よくわからない」が本音ではないでしょうか。
大丈夫です。僕もそうでした。
しかし剣道を探究していくと結局子供の頃に言われていた「下っ腹を意識しろ」という丹田の重要性に気付かされます。
正式には臍下丹田(せいかたんでん)とも言いますが、小難しい事は抜きで説明したいのでここでは丹田で統一して説明します。
場所は、おへそから手のひら一つ分下くらいです。検索すると4、5センチ下とか9センチ下など出てきますが、解剖学的に丹田という部位はありませんので適当で結構です(笑)
大事な事は、上級者の疲れない理由は丹田呼吸法にあるということです。
丹田呼吸がマスター出来れば、疲れないどころか動きのスピードも上がり、打突の強さも増し、心も動じなくなるとう剣道の極意の一つが丹田呼吸法です。
運動において上半身と下半身を繋ぐ体の中心は丹田だと言われています。
どんな競技でもトップアスリート達は、無意識に丹田を意識して手や足の無駄な力を抜いた状態になっているので尋常ではない結果を生み出すことが出来るのです。
息を吐く時にお腹を膨らませるだって?
それでは丹田を意識した呼吸について説明します。
丹田呼吸法で検索すればさまざまな説明がヒットしますが、あまり難しく説明しても伝わらなければ意味がありませんので、ここでは出来るだけシンプルに説明します。
簡単に言うと『息を吐いている状態もお腹が膨れている呼吸です』
よく言う「腹式呼吸」ですと息を吸っている時にお腹が膨れ、息を吐く時にお腹がへこみます。
息を吸っている状態では、体が上手く動けなくなりスキになる事はみなさんご存知だと思います。
ですから息を吐いている状態で相手を攻めたり、打って出たりしなければいけません。
でも想像してみて下さい。攻撃の際お腹がへこんでいる状態で最大限の力が発揮できると思いますか?
金剛力士像のお腹を見てみましょう。あれだけの筋肉美の仁王のお腹が膨れているではないですか!
運慶と快慶のような超一流の仏師です、当然究極の身体について研究したに違いありません。
その超一流の仏師がお腹を膨らませた状態で金剛力士像を彫ったには理由がるはずです。
昔の達人は、丹田呼吸によりお腹が張った状態であったのではないでしょうか。
僕が稽古中にやっている丹田呼吸は
- できるだけ小さく長く息を口から吐く
- 吸う時は鼻から一瞬で吸う
- その際、膨らんだお腹の中の空気(腹圧)に圧をかけた状態のまま息を吐く
というものです。
お腹の中に風船があり、その風船がしぼまない状態にするイメージです。
袴はよく出来ている
昔の人は、身体に対してよく研究していたのだと思うのが、袴にも感じられます。
袴の結び目を思い出して下さい。
ちょうど丹田の位置になります。
子供の頃、ぽっこりお腹のちょうど下あたりに袴の結び目がくると教えてもらったので「昔の人はみんな太っていたのかな?」と疑問に思っていたのですが、丹田呼吸法を理解することでその謎が解けました。
茶道にしても弓道にしても丹田を意識した所作であったのだと思います。
丹田呼吸の練習方法
さて実際に丹田呼吸法をマスターしたいと思っていただいた方にその練習方法について提案しようと思います。
日常生活の中で隙間時間が出来た時などでやってみるのもいいと思いますが、あまり続きそうにないので僕のおすすめは、『切り返し』です。
the普通!と思ったそこのあなた!すみません。
しかし切り返しは習字でいう「永」の字と同じで大切なことがつまっています。
その一つが呼吸の練習です。
ご存知のとおり切り返しは
正面の面→前に4本、後ろに5本切り返す→正面の面→前に4本、後ろに5本切り返す→正面の面
という動作を行います。
その際息を吸っていいタイミングは正面の面を打ち終わった時だけだという事をご存知でしょうか。
前に4本後ろに5本切り返して、間合いを開けてさらに正面を打つまで息を吸ってはいけません。
正面打ちをやった時だけ一瞬で息を吸い、次の正面打ちまで一息となると小さく長く吐く状態でなければ息がもちません。
この呼吸を意識した切り返しを行えば自然と上半身の脱力と丹田呼吸が身に付くように計算された稽古法なのです。
切り返しはとても奥が深いですね。
おわりに
疲れない剣道を身につけるために丹田呼吸と脱力について書きました。
当然疲れない要因としてはさまざまな理由があります。
学生のように膨大な稽古を積むことで乳酸が溜まりにくい筋肉や強い心肺機能が手に入ります。
しかしそんな若者でも高段者の先生と稽古すると肩で息をするくらい疲れてしまうこともあります。
高段者の先生は「攻め」の技術がハンパなく、相手は常に攻められた状態になり、焦って打たされ自分のペースで呼吸ができなくなります。
これも疲れやすくなる要因です。
歳をとっても疲れない剣道が出来るのは、丹田呼吸をマスターしていて、自分のペースで攻める剣道が出来るからです。
一緒に生涯剣道を目指しましょう!
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