おさらい
ここでは実際の試合で使う早い面について解説します。要するに小さく振る面打ちのことです。
今までの大きく振る面打ちと別物と考えて下さい。
しかし、これまでの竹刀の握り方だったり、すり足だったり、大きく肩で振る面打ちが全て土台となっています。
それらが疎かなまま、強い選手に憧れて小さく振る面打ちを真似だけしても、いずれ壁にぶち当たることでしょう。
長い目で見たら、これまでの基礎が出来てから早い面に取り組んだ方が、結果的に上達が早い場合もあると思うのです。
最低限、下記の基礎ができているかチェックしておきましょう。
・すり足、踏み込み足はできているか。
・竹刀の握りは左右とも包丁を握るように正しく握れているか。
・打突した時に右手だけ伸びて左手が曲がっていないか。
・大きな声で発声できるか。
身体の動かす順番
まず、あなたが理想とする選手の面打ちをよく見てみましょう。見習うことは大変重要です。
スマホ一つあれば、超一流選手の動画が見れる時代です。
お気に入りの面打ちを見つけたら、スロー再生してみて下さい。
右足の踏み込み足が着地するより打突が早い事が分かると思います。
指導する際は、打突と踏み込みを同時と教えますが、実際は打突後に右足が着地しています。
全てをほぼ同時くらいのスピードで行いますので、同時に見えますが、順番は大事なポイントですので、意識してみましょう。
小さく振る早い打突は、細かく分けると次の順番で体を動かしています。
①左足の母指球で床を踏む
②腰ごと上半身が前に出る
③手首のスナップを効かせて打突
④右足の着地(踏み込み足)
⑤すり足で前進して残心
この工程を素早く行います。
まずは段階的に練習すると良いでしょう。
練習方法①
まずは、元立ちに対して①〜④までを行いましょう。
左足は始めから最後まで位置を変えずに打突と踏み込み足を行います。
間合いは、通常より近い位置から行います。
打突後は、前進せずに最初の位置に戻りましょう。
終始左足の位置は動かさずに行います。
ここでは左足で体を前に出す感覚、手の内を効かせて小さく打突する感覚、打突後に踏み込む感覚を会得しましょう。
練習方法②
その場で小さく面打ちが出来るようになったら、遠間から一歩入って小さく面打ちをやってみましょう。
一歩入ることで、勢いがついて打ちやすくなります。
左足が歩いてしまい右足のかかとを越えないように注意しましょう。
打突後は、大きく面打ちと同じ要領で前進して振り返り残心まで気を抜かないように行います。
始めは、動作の順番①から⑤を意識して、慣れてきたら間合いを意識しましょう。
遠間(お互いの竹刀が触れない距離)から一歩入り、一足一刀の間合い、そして打突。打突した時にちょうど竹刀の物打ちで打突できるように意識して、自分の間合いを把握しましょう。
練習方法③
遠間から一歩入って面打ちが出来るようになってきたら、次はいよいよ、試合で通用する一足一刀の間合いから、左足を継がないようにして打つ面打ちです。
小学生低学年は中々難しい領域です。その分この面打ちを習得した子から試合で勝てるようになります。
それほど左足を継がずに、一歩で打つ面打ちは剣道の上達の過程で訪れる第一関門なのです。
ここでも結局①から⑤までをスムーズに行うことになるのですが、重要なポイントは重心です。
打とう打とうと思い前のめりになりすぎると、重心が右足に乗ってしまいます。
右足に重心が乗ってしまうと、一度後ろ重心を移動させなければ打突できなくなります。
ほんのわずかな差ですが、これが試合で勝敗を分ける原因になってしまいます。
左足の母指球でしっかり床を押す事で、体を前に送り出せるように、重心を意識しながら繰り返しましょう。
手の内
ここで手の内について触れておきます。
竹刀を早く振るためにはとても繊細な竹刀操作が必要です。
ほとんどの人が「右手に力が入り過ぎている」と注意を受けたことがあるのではないでしょうか。
右手は頑張り屋ですが、一人で頑張りすぎるのが弱点なやつです。
手の内を解説する前に一つ知っておいて欲しい知識として、「大きな筋肉はパワーがあるけどスピードが無く、小さな筋肉はスピードはあるがパワーがない」という理屈を知っておきましょう。
馬の足は太ももの筋肉はとても大きいのに対して、足首はとても細いのが特徴です。
剣道ではいかに竹刀を握る手の力を抜くかが、竹刀を早く振るポイントになってきます。
例えるなら縄跳びの二重跳びに似ています。
二重跳びが出来るようになった時のことを思い出して下さい。始めは腕で縄を回して上手くいかなかった記憶はありませんか?
徐々にコツをつかんで、腕を固定して手首をゆるゆるにすることで、スナップの効きを体得したと思います。
剣道も同じです。
構えた状態から、打突した時のフォームに素早く腕を移行して、手首をユルユルにすると力が無駄なく伝わって、竹刀の先端が走ります。
少しコツが掴めてきたら経験者向けに書いたこの記事も参考にしてみて下さい。
打った後
意外と見落としがちなのが打った後です。
ここでは踏み込みの後、左足で出来るだけ素早くすり足を行い、打突した後の勢いを殺さないように意識しましょう。
試合では、振り返った後に面を打たれることがあります。
振り返りを素早くして、残心をしましょう。
残心と難しい言葉を使いましたが、面を打つ前の①の状態に素早く構えることを意識しましょう。
振り返りのコツは、右足の上に腰がきたタイミングで回るとちょうど右足→腰→頭が一本の軸となってスムーズに回転できます。
おわりに
色々書きましたが、はじめから上手くできる人はいません。
最初は上手い人のモノマネでいいと思います。
自分の面打ちの動画を撮るなどして、上手い人と自分の差を比べてみるのが上達の近道です。
手の内、足さばき等一部分にフォーカスすればきっと違いが見えてきます。あとは稽古でその修正をするだけです。
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