一本とは

初心者マニュアル

どうして一本じゃないの?

剣道初心者の頃は、当たったのにどうして一本にならないの?と思う事があると思います。

特に我が子の試合で、相手に竹刀が当たった!あれ?どうして今の打突には旗が上がらないの?どうしたら一本になるの?なんて思った事がある親は多いのではないでしょうか。

剣道の試合は審判の先生が3人います。3人中、2人以上の旗が上がると有効打突と認められて一本となります。つまり一本を決めるのは選手や親ではなく、審判の先生方が一本を判断します。とても当たり前の事ですが、大切な事です。

ここでは、試合で一本となるための条件や、一本という考え方について理解を深めていただこうと思っています。

有効打突とは

剣道のルールで一本(有効打突)とは「充実した気勢、適正な姿勢をもって、竹刀の打突部で打突部位を刃筋正しく打突し、残心あるものとする」と決められています。うん、ちょっと難しいですね。

分けて一つ一つ見ていきましょう。

(上級者の方からみたら、不足した点があると思いますが、ここでは初心者目線での説明に留めています。)

まず「充実した気勢」ですが、大きな声を出す事で審判にアピールしてください。例えば面を狙って、上手く当てる事ができても、「めんっ!」という大きな声が無ければ旗が上がりません。

次に「適正な姿勢」です。これはイメージしやすいと思いますが、打突した時や打突後に正しい姿勢である事が求められます。

「竹刀の打突部」「刃筋正しく」は、刀で切ることをイメージすると理解できると思います。竹刀は刀のように扱わないといけません。

竹刀の打突部とは、剣先から中結までの間(物打ち)になります。刀で良く切れる部分です。

そして弦(つる)の反対側が刀の刃部になります。

つまり、剣先から中結までの間で、弦が上を向いた状態での打突する必要があります。

「打突部位」とは、相手の面、小手、胴(高校生以上は突きもあります)になります。

ちなみに一本になる打突部位をそれぞれ説明すると

面‥正面と左右にそれぞれ約45度までの面

小手‥小手筒の部分。こぶしの部分は打突部位ではない。左小手は胸の高さより下にある場合は、打突しても一本にならない。(上段の場合や、引面を打って手が頭上にある場合には、左小手も打突部位になる)

胴‥相手の右胴、相手の左胴(逆胴)

という具合になります。

最後に「残心」ですが、一本になる打突をした後も、油断せずに相手の反撃に身も心も備えている状態です。

残心は今説明した通り打った後に心を残すことを教えますが、修行を重ねていくと、心を残さずに打ち切ることで、自然と相手に対応できる状態になるという深い教えもありますが、ここでは敢えてそこまでは解説しません。

ここでは、「充実した気勢」「適正な姿勢」「竹刀の打突部」「打突部位」「刃筋正しく」「残心」の解説をしました。

これは個人的な解釈ですが、ようするに刀で相手を切って、その後反撃されても対応できる状態までいって一本だと思います。

当然刀で相手を切るためには相当な力が必要で、腰が入り、刃筋が立っている必要があります。真剣ですから、負ければ自分が切られてしまいます。覚悟といいますか、気合いがなければ刀を振り切る事も難しいでしょう。相手を切ったとしても、反撃をくらえば命を落とすことになり、勝ちとは言えません。

実際の試合では

実際の試合では、正直これまで解説した全てが満たされていなくても一本になる事もあります。

例えば、

素晴らしいタイミングで捉えた出小手が、小手筒ではなくこぶしの部分に当たった場合

低学年の試合で、打突がポンといい音が鳴ったけど、残心をとらずに次の打突を始めた場合

などは、全ての条件を満たしていなくても一本になる場合をよく目にします。

特に中学、高校の試合になってくると、あと一本で全国大会に行ける等、公式戦における一本の重みが心理的に変わってきます。審判に文句を言いたくなる気持ちも正直分かります。

もちろん審判も人間です。当然誤審もあります。

しかし、チームの負けを審判の誤審のせいにする指導者や保護者には決してなってほしくはありません。その大人達の姿勢を子供達が見ているからです。

大切な事は、「有効打突の条件を満たしていない」と審判を悪く言うのではなく、自分はまだまだ稽古が足りていないと反省し、それを教えてくれた相手に感謝する姿勢です。

これは指導者や親達が子供に教えていくべき文化だと思います。

一本とは

最後に「一本」の概念について考察してみようと思います。

これは、全日本剣道連盟が発行している剣道指導要領を読んで、ハッとさせられたので、そこから引用しています。

刀で斬り合っていた頃は、当然「一本」という概念はありません。

防具や竹刀が出てくるのは、江戸時代の中期ころです。この頃に「一刀」の概念を引き継ぐ形で「一本」が生まれます。

では「一刀」とはどういう概念でしょうか。

武士は、何者にも屈しない強い精神力と機会や人の心を敏感に感じ取る感性を養って、強く美しい自分を育てる事を目標として剣術の修行を行いました。

その過程で、色々な流派において技の極意である「一刀」の観念が確立されていったとされています。

新陰流では「十文字勝ち」、一刀流では「切り落とし」などが極意である「一刀」とされています。

その一刀が通用するまで繰り返し稽古する仕組みは「形稽古」として定着して、「敵の機を見る心」の養成を図るようになっていきました。

「形稽古」の目的は、相手と真剣に対峙することで「気を練り心を養う」ことで、武士としての生き方を学ぶことにあります。

「一刀」の意味は技だけではなく、人間としての精神性をも含むようになりました。

この「一刀」を僕たち剣道家が「一本」として引き継いでいると思うと、身が引き締まる思いになりました。

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