息子からの一言
ある日、中学生の息子が言いました。
「何か壁にぶつかってるんだよね。」
剣道部で稽古も真面目にやっているし、成長期も迎えてどんどんスピード感も出てきていた息子の突然の一言。
咄嗟に良いアドバイスも言えず「とにかくがんばれ」的な精神論しか言えませんでした。
後から冷静になって自分なりに息子に対するアンサーをまとめてみました。
環境を変える
環境を変えることが一番効果が出やすい。
とても単純な話だが、人より多く稽古した方が勝つ可能性は上がる。
人より良い稽古相手と稽古した方が勝つ可能性が上がる。
人より工夫した方が勝つ可能性は上がる。
手っ取り早く、より環境が整った道場なり、学校に環境を変えることが更なる成長には繋がりやすい。
しかし、環境を変えるには時間的、場所的、金銭的な制約も出てくるし、勇気や覚悟も必要だ。簡単な話ではない。
1番効果が高いが、1番コストのかかる選択肢でもある。
己を知る
一言で剣道が強いと言っても、その強さを構成する要素は3つに分けられる。
「心」「技」「体」だ。
漠然と行き詰まっていて、成長する上でこれ以上何をすればいいのか明確ではない状態を「壁にぶつかっている状態」だと感じているのであれば、先ずやるべきことは現状認識だ。
人は、他人のことはよく見えるが、自分のこととなると主観的になってよく理解できない。
正しい現状認識さえできれば、後はロジックで答えは導き出される。
落ち着いた場所で、一人になって自分の心と向き合う時間をつくろう。試合の時に無心になれているだろうか。
自分の試合を動画で撮影して見返してみよう。客観的に見て自分は理想どおりの技を打てているだろうか。
スタミナはあるか。足腰は丈夫か。基礎的なトレーニングでやる事はないか。食事と睡眠の勉強は絶対にした方がいい。心も技術も全て体と繋がっている。
自分を客観的に見ること。大きなことは分解して分けて考えること。
人を知る
自分を知った後は、他者から学ぶこと。
今はネットで有名選手の試合動画を見放題。
これだ!と思う選手の動画を飽きるまで見返すと、今まで気づかなかったところが見えてくる。
それは必ず自分の成長に繋がる。
少しアドバイスをすると、憧れる選手は自分にないものを持った選手が多い。
冷静に自分を分析していれば、自分に似た剣道スタイルの選手が必ず見つかるはず。
単なる憧れよりも、自分の剣道スタイルに合った選手を見習った方が効率は良い。
より高い次元へ
体力を向上するトレーニングも技術の向上もできることはやっている状態であれば、より高い次元の剣道も視野に入れてみよう。
とても抽象的で難しいけれど、剣道をやる上で避けては通れないもの。
それは「攻め」の概念だ。
打突が早いだけでもある程度は勝てるようになる。
しかし、上に行けば行くほど、「単なる早いだけの打ち」は通用しなくなる。
これが剣道が面白いところでもある。
「打って勝つな、勝って打て」という言葉があるが、攻めの重要さを表しているんだよ。
攻めで重要なことは「相手の気持ちを動かす」こと。
相手に攻められても動揺しないことが理想。でもそれが難しいから「不動心」なんて言葉をよく目にする。
攻めのコツとしてちょっとイメージして欲しいのが、犬同士のケンカだ。
弱い犬がキャンキャン吠えても強い犬は動じない。
強い犬が「ウー」と唸っただけで弱い犬は逃げ出してしまう。
攻めは、自分は最小限の動きで、相手に「打たれるかも」「負けるかも」というマイナスのイメージを最大化させることが重要。
これを意識した「声の出し方」「一足一刀の入り方」「相手の竹刀の制御の仕方」「丹田の使い方」をもう一度見直してみよう。
剣道がより一つ上の次元に行けるはず。
急がば回れ
色々アドバイスは思いつくものの、最終的には自分の頭で考えて、自分で行動してみて、上手くいかずに、さらに試行錯誤を繰り返すという経験が一番大切だと思う。
そこから掴み取ったコツと、大人から簡単に教えてもらったコツは文章にすると同じでも、あなたの人生にとっては全然違う。
自分が正しいと思うのなら基礎からやり直したっていい。
勝てない時期があっても、長い目でみればそれが、成長への最短ルートだったりする。
人に言われたことだけやるよりも、自分で試行錯誤して、積み重ねた人の方が絶対強い。
気持ちが折れてもいい。
負けてもいい。
ただ、あーでもない、こーでもないと自分の頭で考えて試していくことはこの先もずっと続けて欲しい。
一人よがりにならないように、自分を客観的に見ることを忘れないこと。
人の話しを素直に聞くことは大切だけど、全て聞く必要はない。アドバイスを取り入れるかどうかは自分で決めて、上手くいかなくても他人のせいにしないこと。
正直壁なんて気付けばとっくに越えている状態になっていると信じている。多分そうなる。
だからこれからも頑張れ。結局最後は精神論でした。(笑)
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