はじめに
新しい技を試しているけど、中々習得できない。
同じ時間、同じ量の稽古をしているのに、あいつの方がどんどん上達していく。
「出来る」人はもともと才能が違うのでしょうか。
剣道が才能だけがものを言う競技なら、ここまで子供からお年寄りまで普及していないでしょう。
だからと言って「いつか出来るようになりたいな」という気持ちでは上達は遅くなります。
今回は、1つの技術が「出来る」ようになるという事について敢えて説明していこうと思います。
このメカニズムを知っていて努力するのと、知らずに努力するのでは、必ず差が出るからです。
この記事を読んでいただければ、努力が報われないと感じている方や、強くなりたいけどイマイチどうしていいか自信が持てずに迷っているあなたの悩みが少しは解決出来ると思います。
「出来る」の正体
どんなスポーツでもそうですが、「出来る」には段階があります。
第1段階 意識していないし、出来ない
第2段階 意識しているけど、出来ない
第3段階 意識すれば、出来る
第4段階 意識しなくても、出来る
「すり足」を例に挙げて解説してみます。
誰でも剣道を始めて、すり足を教えてもらう前は、前に進もうとすると歩いてしまいます。(第1段階)
左足が右足を越える事が普通の状態です。すり足をしようと思っていないのですから、当然です。
しかし、剣道を始めると先生からすり足を教えてもらいます。
日常生活ですり足をやらない子にとって、いきなり「すり足」は意識しても出来ません。(第2段階)
しかし、剣道にとってすり足は基礎中の基礎、出来るまで先生から指摘を受けて、何とか左足が右足を越えないように意識して練習を続けます。
しばらく足に意識して稽古していると、すり足が出来るようになります。(第3段階)
でも意識を手や声など他の事に向けると途端に左足がまた右足を越えてしまいます。
それでも何度も何度も稽古していく内に気付けば意識しなくてもすり足が出来るようになります(第4段階)
無意識でも出来るようになるまでがツラい!
ここで大事なポイントは、無意識でも出来るようになるまで耐える事です。
当然ですが、意識するより無意識で出来た方が、剣道は強いです。
何か新しい技術を習得している時期は頭で意識している分、無意識で動く人より反応が遅れ、剣道が一時的に弱くなります。
しかし、負ける事を恐れて、新しい技術の習得をしない人はいずれ成長が遅くなり、壁にぶつかります。
勝ち続ける一流選手ほど、常に相手から研究されていますので、勇気を持って新しい技術の習得を続けています。
その他、昇段審査を受けようとして「攻めとは」とか「綺麗な面の打ち方」などを意識し出すと今まで勝てていた人に一時的に勝てなくなったりした経験はありませんか?
でもこの時期を乗り越えなければ、無意識で出来るようにはなりません。
1ヶ月ごとにテーマを絞る
では、具体的にはどのくらいの期間、意識し続ければいいのでしょうか。
人間の脳は、変化を嫌う性質があります。
新しいチャレンジをしても3日坊主に終わるのは、この性質があるからです。
だいたい3週間続ければ習慣化されると言われています。
ですので、僕の場合、例えば「今月は面擦り上げ面の練習をしよう」と月単位で考えています。
もちろん1ヶ月くらいで出来ない場合もありますが、月ごとに新しいテーマに絞って稽古しています。
今月は足の事だけ意識する。今月は手の内の事だけに意識する。等とテーマを絞るとこれまで見えなかった事に気づいたりするものです。
そうする事で常に新しい事にチャレンジ出来て、稽古のマンネリ化も防げます。
他人から押し付けられたテーマではなく、自分で決めたテーマだからこそ、稽古が楽しくなります。
また、今月意識したけど出来なかった事が、来年もう一度チャレンジしてみると出来たりする事もあります。
1ヶ月間意識する事で、潜在意識に刷り込まれて、考えていなくても実は色々な情報を脳が処理しているのかもしれません。
「出来る」ようになるための裏技
無意識で出来るからといって本当に自分のものになったと思ったら大間違いです。
自分が習得していると思っている技術を人に指導してみて下さい。
「あれ?以外と分かっていないかも」と気づかせてくれます。
例えば、勉強を人に教えると教える本人の方が意外と勉強になったりします。
アウトプットする事が究極のインプットだったりするのです。
剣道の指導者ではなくても我が子や知り合いに、自分が習得できていると思う技術を教えてみて下さい。
さらに深く自分のものになりますよ。
おわりに
ちなみにですが、昇段審査や試合が近くなったら、「意識的に意識しない」ようにしています。
当然無意識の状態の方が強いからです。
この時期は「とにかく全力を出す」や「この1試合に集中する」などイメージする脳を働かせて、論理的な脳はあまり使わないようにしています。
「無我の境地」とまではいきませんが、その方が実力が発揮できるからです。
しかし、意識して積み重ねた稽古がないと実力は中々付きません。
これまで意識して稽古した積み重ねがあるからこその「無意識」なのです。
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