不安を無くして能力を引き出す
無我という単語が出てきた時点で宗教?などと怪んでいるあなた。安心して下さい(笑)
この記事は鈴木祐さんの書いた『無』を読んで僕なりに要約した内容になっています。鈴木祐さんの本はどの本も膨大な論文がベースになっていて、とても信用度の高い情報になっています。
結論から言うと無我になれば、あなたの不安がクリアになり、まだ眠っている能力が発揮されます。うーんますます怪しい(笑)
でもこの本に僕が本当に伝えたいゾーン体験が科学的に分かりやすく書かれていました。座右の書として何度も読み返して実践していこうと思います。それくらい現代人は漠然とした不安を抱えている人、自分の能力の半分も出せず苦しんでいる人達が多いように思えるからです。
どうしたら無我の境地に至ることが出来るのでしょうか。
それには脳のある余計な働きを抑える事が必要です。
自己とは
無我とは我を無くすと書きます。あなたは「私」という感覚をどう捉えていますか。
過去も未来も変わらず、どんな状況下でも同じ「私」がいると当然のように考えていませんか。僕もそうでした。
しかし科学的にはその考えは間違っています。自己とは「脳の特定の機能の集合体」だからです。
我々の祖先は社会生活の中で生き残るため脳に様々な機能をインストールしていきました。
例えば恐怖は外敵から身を守る行動を促します。恐怖心がない個体より恐怖心がある個体の方が生き残りました。
他には悲しみという感情は大事な物が失われた事を知らせる感情で周囲の援助を促します。
つまり自己という感覚も進化の過程でインストールされた生存ツールの一つに過ぎないのです。
現実=脳が作り出した物語
ヒトの脳は物語の製造機であると神経科学の分野で言われるそうです。
一流のテニスプレイヤーは時速200キロのサーブを打ち返します。しかしここで問題が一つあります。人間は目から入った光が網膜で電気信号に変わり、脳内でイメージに構成されるまで約0.1秒かかります。0.1秒あれば相手がサーブを打ったと認識した時点で、ボールは既に5メートル近く進んでいる計算になります。現実的に考えてこれではボールを打ち返すのことは不可能です。
実は人間の脳は相手がボールをトスアップした時点で次々と物語を作り始めているのです。
人間の脳が物語を作るのは日常の活動に使うエネルギーを節約するためです。
この物語を作る機能が良いように働けばいいのですが、悪い方向に働く事でヒトは必要以上に苦しむのです。
例えば友人と口論になったとしましょう。
Aさんは、「この問題をどう解決するか」と考えます。
Bさんは「おれが悪いことをしたのかも」と考えます。
Aさんは「他人と意見が違うのは当たり前で、これは問題解決に向かうプロセスだ」という物語を採用し、Bさんは「おれは失敗が多い人間だから気づかない内にまた何かやらかしたのかも」という「物語」を採用しています。
同じ現象でもその人間の脳が作り出す物語によって行動は変わってきます。
ここで大切な事は同じトラブルが発生しても苦しむ人とそうではない人の違いは決してメンタルが強い弱いという事ではないという事です。
あなたの脳内で作られる物語が適応するかそうでないかの問題であると認識することです。
デフォルトモード・ネットワーク
もう一つ脳の機能で知っておいて欲しい事はデフォルトモード・ネットワーク(DMN)という神経回路の存在です。
あなたはぼーっとシャワーを浴びている最中や目が覚めた直後に良いアイデアを思いついた経験はありませんか。その脳の働きがDMNです。
これは脳が意識的な活動を行わない状況で活動を始め、色々な情報をまとめて新たな発想を生むのに役立つネットワークのことです。とても素晴らしい機能ですが、近年私たちの苦しみを生む原因とも分かってきました。
「あの人に嫌われたかもしれない」とか「あの失敗はまずかったかな」など自分にまつわるネガティブな物語を勝手に生み出す機能でもあるからです。
苦しみ=痛み×抵抗
これまでの脳の機能をまとめると
- 自己とは特定の機能の集合体である
- 脳は物語を作りそれを現実と思い込む
- 脳は意識しない間も活動し悪い物語を生み出し続ける
となります。
仏教研究者のシンゼン・ヤングは苦しみのメカニズムを
苦しみ=痛み×抵抗
と表しました。一時的な苦しみに対して人は抵抗することで苦しみが増幅してしまうのです。一時的な苦しみは誰にでも訪れます。大事な事はその苦しみを「物語」で増幅させないことです。
よくある抵抗の典型例を列挙しておきます。
- 「怒り」自己のイメージの崩壊、失敗の恥を認められない。
- 「引きこもる」恥を知る相手との関係を避ける。
- 「メタに身を置く」不安を押し殺して、一段上にいるかのように振る舞う。
- 「見えを張る」過去の成功を自慢、権力の誇示。
- 「頑張りすぎる」自分が無価値だと思いたくないためハードワークをする。
- 「刺激に頼る」ネガティブ思考から逃れるため、酒、ジャンクフード、激しい運動に頼る。
無我の境地に入るには
無我を難しく考える必要はありません。あなたも自分の好きな漫画や映画、音楽に没頭した体験があると思います。また子供の頃に友達と遊びに夢中になった経験があると思います。
その夢中になった状態の時には「私」という感覚が無くなり、不安や苦しみも感じなかったのではないでしょうか。
この本で無我になるためには「停止」と「観察」という技術を身につける事が必要だと説明されています。
先述したとおり脳は放っておくとネガティブな物語を繰り返してしまいます。「停止」の力で物語の働きを限界まで下げ、「観察」の力で物語を現実から切り離すというスキルによって無我に入ります。
具体的な方法を知りたい方は是非本書で確認したほうが間違いがないと思いますが、いくつかその方法を列挙してこの記事を終わりにしようと思います。
無我の境地に至れば冗談抜きで「自由」になります。僕も含めて自分の脳内で作られる悪しき物語に縛られている人が殆どです。この物語に気づき自由さを手に入れることで世界一の金持ちよりも世界一の権力者よりも充実した人生を送れると考えています。
停止・観察のトレーニング方法
- 作務(さむ)‥日常の食事や皿洗いなどの動作など目の前で起きている事に意識を向ける。
- 止想(しそう)‥神経科学ではフォーカスド・アテンションとも言う。呼吸や音などの対象に意識を向ける。
- 語想(ごそう)‥特定の言葉を何度も繰り返す。特定の言葉をじっと見つめる。念仏などもこれ。
- 慈経行(じきんひん)‥ウォーキングをしながらすれ違った他人の幸せを願う。
- 畏経行(いきんひん)‥日常の中でいままで気づかなかった新たな驚きや感動を意識して探す。
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