キングオブ基本「切り返し」

初心者マニュアル

切り返しとは

習字を習い始めると、「永」という字を練習します。この字には習字の基本である「とめ」「はね」「はらい」が詰まっているからです。

習字でいう「永」の字が剣道の「切り返し」です。

剣道を深く知れば知るほど、切り返しという稽古法の深さが分かってきます。八段のような高段者の先生でも必ず行う稽古法です。

切り返しを何度も何度も稽古することで

  • 正しい手の内
  • 正しい足さばき
  • 間合いの感覚
  • 気力や体力の向上
  • 気剣体が一致した打ち

等が身につきます。

とはいえ正しい切り返しを繰り返さないと、効率が悪いため、是非焦らずに正しい切り返しをマスターしましょう。

第一段階

先ずは、細かい部分よりも大まかに切り返しを把握しましょう。

前提条件として、切り返しは全て大きく振りかぶって打突します。

説明に出てくる右側の面は相手の左面、右側の面は相手の左面のことです。

本来であれば、正式に右面、左面と説明するべきかもしれませんが、初心者の内は自分視点で右、左としたほうが、分かりやすいと思いますので、今回はプレイヤー目線での説明で統一します。

(右側の面🟰左面、左側の面🟰右面)

切り返しのやり方ですが

① 遠間から構えて、一足一刀の間合いに入り、正面を打って前進

② 前進した後、右側(相手の左面)、左側(相手の右面)の順で前進しながら左右の面を4本打つ

③ 次に後退しながら右側、左側の順で左右の面を5本打つ

④ 最後の右側の面を打ったら、そのまま最初の位置まで後退する

⑤ ①〜④をもう一度繰り返す

⑥ 最後に正面打ちを一本打って残心

となります。

始めは、手と足が一致しなかったり、刃筋正しく振れなかったりしますが、気にせずに打突する本数を体で覚えましょう。

  1. 正面打ち 1本
  2. 右、左、右、左 前進4本
  3. 右、左、右、左、右 後退5本
  4. これをもう一度繰り返して、最後に正面打ち 1本

始めは↑こんなイメージでいいと思います。

この段階では一本一本ゆっくり打突しましょう。

第二段階

本数をわざわざ心の中でカウントしなくても切り返しが出来るようになったら次の段階です。

大きな声は出ているか

全ての打突を肩を使って大きく振りかぶって打突しているか

後退での最後の右側の面打ちは引面とは違うため、打った後に腕を上げない(中段のまま下がる)

左右の面打ちは、約45度の角度で打突できているか(刃筋が正しいか)

すり足は正しいか

など切り返しの基本が出来ているか、指導者にチェックしてもらったり、自分で動画を撮り見直してみましょう。

この段階は、動作の正確性を優先しつつも、スピードも上げていきましょう。

第三段階

さらに回数を重ねてきたあなたは、切り返しという稽古を意識せずこなしていると思います。

無意識に「切り返しは稽古の始めに行う準備運動的なもの」と思ってしまっている方もいるかもしれません。

しかし、始めに説明したとおり、切り返しは高段者の先生方も生涯行う稽古法ですので、そんな浅いものではありません。

慣れてきたら、次の事も意識してみましょう。

出来るだけ速く

出来るだけ正確に

出来るだけ大きな声で

出来るだけ一呼吸で

切り返しを本気でやると、1回やっただけでも疲れます。

ちなみに呼吸についてですが、上級者は正面打ちを打突した後だけ息を吸っています。

つまり

やーっ めーん(正面) 「ここで呼吸!」

めん、めん、めん、めん(前進4本) めん、めん、めん、めん、めーん(後退5本)

めーん(正面) 「ここで呼吸!」

ご理解いただけましたか?左右の面を打っている間は呼吸をほぼ止めているか、静かに息を吐いている状態です。

特に後退最後の面を打って下がった時に気が抜けて、つい息を吸いたくなります。

切り返しは元立ちの稽古にもなります

考え方としては「いかに相手に気持ちよく打たせるか」です。

打ち間はお相手によって微妙に変わります。身長の高い人、低い人、リーチの長さ、打突の癖などがあるからです。

元立ちをする時は、様々なお相手に合わせて、一番打ちやすい絶妙な間合いで受けるように心がけると、あなたの間合いの稽古になります。

また、竹刀で相手の打突を受ける際、

 打突の強い方には、受ける瞬間、相手の打突の勢いを下に逃すイメージで、若干打ち落とす

 打突の弱い方には、受ける瞬間、相手の打突の勢いを殺さないように、若干引き込む

などの工夫をすると良いでしょう。

切り返しは動作の基本、間合いの基本、呼吸の基本など剣道の大切な要素が詰まっています。

質の高い稽古をするためにも、初心者も上級者も切り返しの研究を続けるとより剣道が楽しくなると思います。

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