息子の卒業

保護者、指導者

息子の卒業

時が経つのは早いもので、息子が無事に小学校を卒業しました。

低学年の頃は、よく友達とけんかして学校から電話がかかってきていたのを思い出します。

剣道では、やる気を失いかけ、剣道やめたいとまで思った時期もありました。

妻が「試合に勝たなくてもいいから、とりあえず小学校卒業までは続けなさい。」と説得したところ、今ではまた剣道が好きになってくれて、中学校でも剣道を続けるみたいです。

振り返ると僕は、道場の指導者としての立場があったので、息子ばかりを特別扱いする訳にはいかず、父親としては、もっとアドバイスした方がいいかなと迷う時期もありました。

指導者の立場を優先させた事は、僕が「公平な良い指導者」と思われたいエゴじゃないか。

自分の承認欲求を満たしたいだけじゃないか。

父親としては、もっと息子が剣道上手くなるように特別視した方が良いのでは。

そんな事で悩んでいました。

今だに答えは出ていません。

でも、息子は勝手に親の想像を超えて成長していました。

どんな中学生になりたいか

息子の小学校の6年生達が「どんな中学生になりたいか」というテーマで作文を書いた文集を目にしました。

多くの子達が「部活をがんばりたい。」「勉強をがんばりたい。」という努力目標を書いていた中、息子はこんな内容のことを書いていました。

「周りを見ることの出来る中学生になりたい。」

「理由は、中学生になると自分一人でやらなければならないことが増えるため、出来ずに困った人がいたらすぐに声をかけてあげられるから。」

「そのためには、自分のことで精一杯にならないように、先生方の話をよく聞き、余裕を持つことが大切だ。」

みたいな事が書かれていました。

僕はこれを読んで泣きました。

父親として息子が人としてこんなに成長してくれていた事に驚きました。

僕は本当に自分の事で精一杯で、他者への関心や思いやりを持つようになったのは、恥ずかしながら30代から40歳になるころからでした。

息子が、これまで良い先生や友達に囲まれて来たのだろうなと思うと感謝しかありません。

そして、その出会いを活かすのは本人の素直さだと思います。

木が大きく育つには、太い幹が必要です。

太い幹になるには、それに見合う立派な根っこや良く肥えた土壌が必要です。

早く成長する木はその分幹は細くなり、生い茂る葉っぱの量にも限界があります。

大きな木になるには、それなりの時間が必要です。だから昔の人は「大器晩成」と言ったのでしょう。

スキルに走っても、土台の人間性が成長していないと結局だめだという真実は今も昔も変わりません。

ただ、AIが発達して、多様性が叫ばれる現代社会では、どんな人でも許容できる「大器」、すなわち人間的に成長したリーダーがこれまで以上に必要になってきています。

そんな時代で、人間性を伸ばす事を目標にしている剣道という武道は、もっと脚光を浴びる日が必ず来ると信じています。

そんな事を考えながら、ここまで成長した息子を本当に誇らしく思いました。

中学校の剣道環境

運の良いことに、息子が春から通う中学校には剣道部があり、部外から来てくれる指導者もいます。

剣道を続ける場合、大部分の人が、小学生の間は道場に通い、高校は剣道部がある高校を選択します。

そんな中、多くの子ども達は地元の公立中学校に進学します。

しかし、日本中の公立中学校に剣道部があり、剣道を指導してくれる大人がいる訳ではありません。

引越しをしてでも剣道の強い中学校に子どもを入学させたり、私立の学校に入学させる熱心なご家庭もあることでしょう。

ただ、多くの子ども達は地元の中学校に進学するのが現実だと思います。

義務教育の公立中学校に質の高い剣道環境を求めることが、どれだけ困難なことか。

先生達の本分は質の高い授業をすることです。

そう考えると、息子が普通に進学する地元中学校の剣道環境が整っている事は奇跡的な事です。

そのありがたみを忘れずに、伸び伸びと人として成長してくれる事を心から願っています。

文集に一つも勉強を頑張るとの記載が無かったことに一抹の不安を覚えたのは、この際忘れておくことにします(笑)

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