至高の一本とは
剣道経験者のあなたなら、頭でイメージしている『究極の一本』があるのではないでしょうか。
僕は、國友錬太朗選手が全日本選手権で見せた、大きくて、腰が入っていて、相手の機会もとらえていて、かつ速い、あんな面が理想の一本です。
『究極の一本』は人生を通して追い求めますが、ここで解説したいのは『至高の一本』です。
究極の一本と違い『至高の一本』は現段階で自分が出来る最高の一本の事です。
あなたの記憶にも必ずあると思います。忘れられない一本が。
それは、どんな状況でどんな相手に対して決まった一本ですか。
それは、無心で打てた一本だと思います。
いつもの稽古で至高の一本が打てるようになりたいものです。
いつまでも忘れられない一本
僕が今も忘れられない一本は、2回あります。
1回目は、大学生時代の試合で打てた飛び込み面です。
団体戦で強豪校とあたり、中堅で登場した僕は、格上の相手に必死に食らいつきますが引面を取られてしまいます。
しかし2本目の開始の合図の後、不思議な事に気づいたら相手を抜き去り、旗が3本上がっていました。
当時の僕は、右手打ちの癖や足幅が広すぎて伸びのある打ちが打てないという悩みがありました。(今にして思えば、速さを勘違いしていました。)
しかし、あの時の面は、右手に力を入れるわけでもなく、相手をしっかり見るわけでもなく、気づけば相手をすり抜けていました。そのくらい試合中でも質の高い集中が出来ていたのだと思います。
満足した一本が出た僕は、その後また引面を取られ結果負けてしまいます(笑)
至高の面を打てた僕は、負けたのに試合後も満足感が残っていたのを覚えています。本当は負けて悔しがるべきなのでしょうが。
2回目は、六段審査の立ち会いでした。
僕はリバ剣をして剣道を一からやり直したので、昇段審査には大変苦労をしました。
その分六段に合格させてもらった立ち会いは、思い出深いのです。
特に2人目の立ち合いで「あっ、合格した」と確信した一本があります。
立ち会い当初お相手の方は、焦りが見えて攻め合いもそこそこに面を打ってきたので、僕の返し胴が決まりました。
しかし僕も「自分から攻めた打ちを出さなければ」と焦り、自分からしかけた面は空を切ります。
返されるのが怖くて、充分に攻めが効いていない状態で飛び込んだからです。
そこで次は、左足を固定し腰ごとすーっと体を前に出しながら、お相手が動こうとした瞬間面を打ちました。
さきほどの面と違い、腰ごと前に出ていたため力強い出鼻面になり、手応えを感じました。
「合格した」と確信した瞬間、「残心まで気を抜くな」と自分を戒めたのを覚えています。
自分至上最高の一本である『至高の一本』がたまに出るから剣道は楽しいですね。
それでは、至高の一本を出すために大切な要素「お相手」「日々の稽古」「コンディション」について説明していきます。
お相手
至高の一本を打つ条件としては、日々の稽古や、その日のモチベーションがとても重要です。
しかし、決して忘れてはいけないことは「お相手」の事です。
いい相手なくしていい立ち会い、いい試合は生まれません。
剣道は、茶道と同じで一期一会を大切にしています。
たとえいつもと同じ稽古相手でも、まったく同じ内容の立ち会いは2度とありません。
また、実力差がありすぎてもいい一本は生まれません。実力が拮抗するという事は、お相手も長い年月をかけて稽古を積み重ねてきたからこそです。
綺麗事ではなく、本当にいい立ち会いが出来ること自体、お相手に感謝しかありません。
その気持ちが、自分をより良い状態にします。
日々の稽古
「至高の一本」が出る時は大抵無心の状態です。
左脳が働きすぎて、あれこれ考え過ぎると自然体での技は出にくいと思います。
しかし、日々の稽古の中で「今日はこの技を試してみよう」「この前注意された所を気をつけよう」と課題を持って稽古することはとても重要です。
やらされるだけの稽古よりも、主体的に稽古に取り組むことでさらに上達するからです。
そして上達した動きや技を無意識でも打てるようにすることも重要です。
「意識してやってみる」→「意識したら出来るようになる」→「意識しなくても出来る」
この繰り返しです。
無意識でも打てる技が多くなれば、相手によって「意識して」技が組み立てられ、有利になります。
コンディション
いくら実力があっても、本番のコンディションが悪ければ至高の一本は生まれにくいでしょう。
コンディションに大きく関わってくるのが、心です。
いくら早寝早起きをして、体にいい物を食べて、適度な運動をして体調が良い状態であっても、大切な人から嫌味を言われたり、上司にパワハラを受けたりしたら最悪な気分になりませんか?
僕のやっている事ですが、
・ 稽古までのルーティーンを決めておく
・ 前日に準備を万端にしておく
などで稽古や試合にだけ集中できるように、その他の事柄を考えなくていいようにしています。
おわりに
僕は子供たちの稽古の締めに、「今日一の一本」を打たせています。
今日出来る最高の面打ちを一本だけ打って、いいイメージのまま稽古を終えるためです。
動かない相手ならある程度気持ちのいい面が打てるものです。
動く相手には中々納得のいく一本は当たりません。
立ち会いや試合のような本番では尚更です。
しかし、どんな段階の方でも『至高の一本』が決まるチャンスはあるのです。
次回の稽古でも出るかもしれません。是非意識して稽古してみて下さい。
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