直心(じきしん)とは

経験者

僕はYouTubeで、ある立会いを見て感動で涙しました。

それが福岡県の濱田先生と原先生の八段同士の立会いです。

とりあえず初太刀の攻防だけでも見て下さい。

ご覧頂けたでしょうか?

はるか上の先生方ですので、技術的なコメントは「凄すぎる」としか言いようがありませんが、僕が感動したのは、初太刀に濱田先生の出頭面が決まった後の原先生の態度です。

「素晴らしい面を頂戴致しました」という気持ちが聞こえてきそうな一礼。

その曇りのない洗練された心から出た動作に心が動かされました。

これを読んでいただいている方はご存知でしょうが、剣道では「直心」という心の様を大切にしています。

直心とは正しくまっすぐな心という意味です。

僕たちは子供のころ正直さの大切さを家庭や学校で教えられてきたはずです。

しかし大人になるにつれて正直な、素直な心のままでいられる事がいかに難しい事か誰もが理解していると思います。

すぐに誰かとくらべ、相手を認められない。心の底から他人を信じることが出来ない。自分の心の声を聞かなくなって人生こんなもんだと決めつけてワクワクする事のない昨日と同じ今日を繰り返す。

剣道に限らず弓道や茶道などでも道場によっては「直心是道場」(素直な心があればどんな場所でもそこが自分が成長出来る道場となるという意味)を掲げている道場を目にします。

今回の立会いに話を戻します。

原忠夫先生と言えば現役時代に全日本剣道選手権で3位にまでなられた方です。

苦労したとはいえ若くして八段も合格した先生です。

どんな人間も初めから人格が出来るわけではないと思います。

慢心してしまった時代もあったでしょう。

もしプライドだけ高い方でしたら初太刀を受けた時点で、「悔しい」だったり「みんなが見ている前で」だったりとどちらにせよ動揺するはずです。

しかしお相手の先生の素晴らしい面打ちを讃え無意識に一礼されたのです。

決して立会いの最中に礼をする行為を称賛しているのではなく、はるか上の存在である八段の先生が修練の末に技術だけでなく、あそこまで素直で洗練された心も備わっている事に感動したのです。

剣道は人格を成長させるためのツールだと考えています。

直心という心の状態は精神的に何度も壁を越えた先にある心理状態だと思います。

今回の立会いは僕にとってこれからの稽古の希望となる立会いでした。

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